【完】君に贈る歌


橘君の過去。

中学生の頃の同級生に色々聞いて回ったら、話のピースがどんどん繋がっていったらしく、桔梗の日記と話を織り交ぜてあたしに教えてくれた。


あたしは小沢君に聞いてしまったけど、聞いても良かったのかと思ってしまう。


橘君はある女の子を殺してしまった。

自分で手を下した訳じゃない。
でも、殺してしまった。

・・・らしい。



ある言葉一つで、その子を死なせてしまってからずっと後悔をしていた。

罪を償って、背負っていこう。


その気持ちが少し歪んで、桔梗を傷つけようとしてしまった。

そして実際に傷つけた。



桔梗の日記には他にも家族の事も書いてあったと小沢君は言う。


「桔梗は翔太の様子がおかしかったってことも書いてあった」


「様子が??」


「圭介なら桔梗を幸せにしてくれると思う、声戻るといいな。こんな感じのこと。なんとなくだけど、どこかへ行ってしまいそうな・・・そんな感じに聞こえないか?」


「んー・・・聞こえなくも・・・ない、けど」


「とにかくだ。"さやか"っていう女の子が翔太のカギだったはず。俺らの前から姿を消した本当の理由はまだちゃんと分かってはいないけど、少しはこれが関わっているはずだ。・・・翔太は今でも苦しんでると思う」


「そりゃ、あたしが橘君の立場でもずっと辛いよ・・・」


「俺はずっと一緒にいたのに気付いてやれなかった。馬鹿だからしょうがねぇんだけどさ」


「・・・どうするの?」


「とりあえず、俺は"さやか"のフリをしようと思う」


「え?は?どういう・・・」


「その為に新しい携帯を契約してきた」


「い、意味分かんない」


「いいから見てろ」


あたしは黙って頷いた。

話の理解はできたけど、今から小沢君がする事で橘君が戻ってきてくれるとは考えられない。


確かに"さやか"さんの事は辛くて、苦しくて。
そのせいで桔梗を傷つけちゃったのかもしれない。


でも今好きなのは桔梗。
そんな桔梗と親友の小沢君が付き合ってるなんて・・・。

それが耐えられなかったんじゃないのかな?
< 119 / 150 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop