【完】君に贈る歌
◇本番
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「わぁ!!雪だよママ!!」
「本当!初雪ね」
「えへへ!!パパに教えなきゃ!!早く帰ろう!!」
「ちょっとあまり走っちゃ駄目よ!!」
通りすがりの親子に目を向けると、幼い頃の自分と重なった。
今頃父さんと母さんはどうしているんだろう。
俺なんか気にせずに離婚をしたのだろうか。
「本番は明日か」
時が過ぎるのはとても早い。
"さやか"のメールを受け取ってからオーディションに合格した。
メンタル的に弱かった俺を支えてくれたから、合格できたんだと思う。
それにはすごく感謝はしている。
でも俺は、あのメールの通りに立花と幸せになるつもりはない。
もう立花へのあふれる思いはあのノートと一緒にゴミ箱へ捨ててきたから。
「・・・馬鹿野郎。幸せにするのは俺じゃなくて、お前なのに」
一人ぼそっと呟き、粉雪が舞う中を歩く。