【完】君に贈る歌
本番の会場にようやく着き、リハーサルを始める。
俺はどうやらトリらしい。
人数はオーディションの半分以下で開催されるらしく、ゴールデンタイムに始まってちょうど良い時間帯に番組も終わらせる事ができるという。
トリだけど、テレビ見てくれたら見られるはずだよな。
あまり時間も遅くならないし。
・・・立花の目に俺を写す最後だ。
そう思うと少しだけ胸が苦しくなった。
でもすぐに気を取り直してリハーサルに励む。
立ち位置やスポットライト。
どこで審査員が投票のボタンを押すのか。
ここでの優勝者はどうなるのか。
そう言った事を教えてもらった後、俺ら一人一人が軽く歌って解散となった。
「ありがとうございました」
俺はお礼を言って会場を出ようと思い、扉に向かって歩き出した。
だけど扉の前には見慣れた人たちの姿がある。
「・・・翔太」
「翔太っ!!」
「父さん?母さん??」
母さんは俺の名前を呼ぶと同時に俺を抱きしめてきた。
その後を父さんも追ってくる。
そして母さんごと俺を包み込んだ。
「ごめんなさい、ごめんなさいね翔太」
「悪かった。本当に」
「・・・どうして二人が」
父さんと母さんは俺から手を離すと「翔太の友達からこのオーディションを受けたと聞いた」と言ってきた。
多分、俺がオーディションに合格したと見越して二人は来たのだろう。
不合格だったらいなかっただろうに。