【完】君に贈る歌


「私たちもう一度やり直すことにしたわ」


「・・・大丈夫なの?」


「ああ、心配するな翔太。俺らはまた一から始まるんだ」


「・・・」



ああ、本当にお節介だ。

"さやか"は。



・・・いや、あの馬鹿は。


「しょうがないな。少しだけ信じてあげる」


「翔太・・・!!」


「帰ってきなさい。・・・優勝してな」


「頑張るよ」




俺は今、一人で頑張っているつもりでいた。


でも違った。

結局離れていても、近くにいる奴は近くにいる。


俺の為に頑張ってくれる奴がいた。



どこでどうやって"さやか"のことを知ったのか。


どんな風に父さんと母さんに伝えてくれたのか。



それは分からない。




「知らないフリしといてやるよ」


「何か言った?翔太」


「ううん。ほら、俺もネカフェ帰るから二人とも帰ろう」


「お前ネフカフェなんかに泊まってたのか・・・!?金は???それよりそんなところ寝心地いいのか!?」


「そんなに心配しないで。俺の通帳からはまだ引きだすほど使ってないから。寝心地もそれなりに嫌いじゃないよ笑」




外に出ると雪が止んで、晴れていた。

雨が降っていたわけでもないのに遠くの方に虹が見える。


───今の俺の心のようだ。
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