【完】君に贈る歌


**


練習もほどほどに終え、本番会場へと向かう。


父さんと母さんが俺よりも緊張しているのかさっきから一言も喋っていない。




「俺、好きな人がいるんだ」


そんな中で俺の急な告白に、二人は驚きを隠せていなかった。



「ええっ!?そうだったの・・・!?私全然そんなっ」


「い、今言う事なのかそれは!!」


「まさか翔太に・・・。私自分の事ばかりで本当に分かっていなかったのね」


「俺も仕事ばっかりで・・・」



二人はすぐに過去を後悔し始めた。

でも俺は少し笑ってこう伝えた。



「俺はその子に向けて歌うんだ」



慌てていた父さんと母さんも、その言葉を聞いて何故か落ち着いた。


心の中でどう思っているのかは分からない。

ただ二人は俺に「楽しみにしている」と言ってくれた。




会場に着き、俺は車を降りる。




「行ってくるよ」



いってらっしゃいと言われ、俺の心はなお安定した。


これで緊張なんてものは俺には効かない。


ただ伝えるだけ。




俺の想いを立花に。


それで全部終わりを告げる。
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