【完】君に贈る歌
「じゃあそろそろ行こう。皆乗ってくれ」
「ちょっと狭いかもしれないけど・・・。貴方達は細いから大丈夫よね」
私はぺこりと頭を下げて、芽衣子ちゃんの次に後部座席に乗った。
その後を小沢君が続けて入ってくる。
一体どこへ行くのだろう。
小沢君はデートと言っていたけれど、そんな雰囲気じゃない。
運転席に座っている人と助手席の人は一体誰?
芽衣子ちゃんは何か知ってるのかな?
色んな疑問が頭の中でぐるぐると回った。
「立花ちゃん」
そんな時、小沢君が私の名前を呼んだ。
だけどそれは付き合う前の呼び方。
「今日はすっげぇ楽しい日にしてやるから!!」
最後なのに?
終わりなのに?
そう言いたかったけど、私はノートに何も書かなかった。
ただ愛想笑い程度にしか笑えなかった。
きっと小沢君の気分を悪くしてしまっただろう。
目的の場所に到着するまで、私はずっとうつむいていることしかできなかった。