【完】君に贈る歌
*
「飲み物追加でお願いしまーっす!」
電話越しに話す圭介の姿は、昼間の学校で落ち込んでいた姿とは全く違った。
俺らは今、数時間前に誘われたカラオケ店内にいる。
「今日は俺の奢りだー!!!」
「えっ!圭介くんいいの?」
「あたしたちが誘ったのにありがとねぇ!」
「やった♪一杯食べて一杯飲もう!ねっ翔太くん!」
確かにバイト代入ったとは言ってたけど、立花の為に使うとか言ってなかったっけ。
・・・俺が言ってもどうせ「大丈夫大丈夫」とか言ってくるんだろうな。
で、結局金欠で俺に泣きついてくるのが目に見えてくる。
「やっべぇ!久しぶりのカラオケ超発散!・・・ゴホン。立花ちゃんへの愛を歌います。I LOVE YOU」
圭介の言葉と共に最近流行りの歌のイントロが流れ始めた。
俺はテーブルの上の食べ物を食べ、その様子をうかがう。
「今の俺には~君しかいなくて~♪」
圭介の歌声は見た目に似合わないほど爽やかだ。
少し音程は外すけど、まぁ聞いていられる。
「ねぇねぇ橘君」
周りが圭介と盛り上がっている中、一人の女子が話しかけてきた。
今にも触れそうな位置に移動してくる。
「立花桔梗さんのこと・・・どう思ってるの?」
「いや、どうって・・・。んー、転校生でクラスメイトで隣の席」
「それだけ?」
「え?うーん。・・・後は声ちゃんと聞いた事ないから気になるし・・・圭介の片想い相手だな」
「・・・もうない?」
「特には」
「そっかぁ♪よかった!」
それだけ聞いた後そいつは盛り上がっている輪の中に入っていってしまった。