【完】君に贈る歌
力強い歌声。
その中にも優しさがあって、聞いていてとても心地がいい。
今までの人とは違う何かがその歌にはあった。
心を揺さぶられるというか、何かが私を突き動かそうとしている気がする。
歌詞もそうだけど翔太君自身から何かすごい気持ちを感じた。
私はいつの間にか目から涙を流していた。
何度拭きとってもあふれ出す涙。
芽衣子ちゃんがハンカチを差し出してくれて、小沢君が私の頭にぽんと手を置いてくれた。
なんとか涙を抑えて翔太君の歌を聞き続ける。
ずっとこの空間が続けばいいのに。
そんな風にも思った。
それほど翔太君の歌は私を虜にした。
声が出ていた時の私なんかよりも、ずっとずっと素敵な歌声。
「二人の距離を重ね合わせて夢に誓おう」
その歌詞を最後に翔太君の歌は終わってしまった。
会場はしんとしている。
私は抑えていた涙を流した。
そして、こっちを見ている翔太君に優しく微笑む。
会場中が盛大な拍手に包まれた。