【完】君に贈る歌
「いやぁ、すごいとしか。素晴らしいとしか言いようがありません・・・!何か言いたい事はございますか??」
司会者が鼻息を荒くして翔太君に質問している。
「えー・・・。この曲はある人への想いだけを頼りに、俺の今までの気持ちを綴ったものです。この番組を見て俺の歌を聞いてくださった方、この会場で聞いてくださった方にそれが伝わればいいなと思います」
翔太君がその質問に対して答える。
久しぶりに翔太君が喋っている姿を見た。
とても生き生きしている。
やりきったというオーラがとても出ていた。
「これは"君に贈る歌"です。聞いてくれてありがとう」
翔太君が真っ直ぐ私を見つめてそう言った。
そして静かに去っていく翔太君。
私は『待って』と声も出ないのに叫んでいた。
でも翔太君は気付かずステージ袖に去っていってしまった。
司会者が何か喋っているけど、私にはもう何も聞こえない。
私にはもう彼の声しか耳に入らない。
目の前で続けられる優勝は誰なのかという発表。
どうでもよかった。
今すぐ翔太君を追いかけたかった。
「・・・おい!!!」
ふと気付くと私は小沢君に大きく揺さぶられていた。
「・・・?」
「翔太が・・・優勝だってよ!!!!」
得点をつけるまでもなく翔太君が優勝だった。
観客も、出演者も、審査員も全員が納得の優勝。