【完】君に贈る歌
「優勝、おめでとうございます!」
司会者の人はにっこりと笑い私に賞状とトロフィーを手渡してきた。
会場中の人たちが私たちを大きな拍手で包んでくる。
「『君に贈る歌』は貴女に贈られたものだと上の方でも決まりました。なので、この優勝は貴女のものでもあります。前代未聞の歌番組だと言われるのも、僕達にとっては褒め言葉なので・・・!」
司会者の人がそう言って、観客やテレビカメラの前でウインクをした。
私の隣にいる小沢君は晴れやかな表情だ。
どうしていいのか分からず、私はずっと受け取った賞状とトロフィーを見つめた。
「立花ちゃん」
「・・・?」
「今度こそ、一人で行け」
「・・・」
「まだ好きなんだろ?翔太のことが」
元々、気付かれていたのかもしれない。
付き合い始めた時から私が翔太君のことを忘れられないということ。
それを隠して小沢君に甘えていた私も、ばれていたのかもしれない。
「・・・がと・・・」
「た、立花ちゃん!?」
自分でも気付かなかった。
『ありがとう』と言った瞬間、私の声がほんの少し戻ってきた事を。
だってそんな事気付く暇もなく私は走りだしたから。
大好きなあの人の元へたどりつくために。