【完】君に贈る歌
俺はゆっくりと振り向いた。
「・・・た・・・たち、ばな」
あの時とは場所も、季節も、雰囲気も、俺らの関係も全て変わってしまっているけど同じだった。
少し息を切らしている立花がそこにいたのだ。
しかも立花の手にはトロフィーと賞状。
来てくれるはずないと思っていた相手が、目の前にこうして立っている。
「立花、俺・・・」
立花はずっと下を見て俺を見ようとしない。
「そのトロフィーと賞状。まさかと思うけど、俺のだったりするの?」
小さく頷いた立花。
「そっか、ありがとう。ごめんなわざわざ」
俺は今すぐ逃げ出したかった。
トロフィーと賞状なんて置いてすぐに立花の目の前からいなくなりたかった。
今更俺にどうしろと言うんだ。
・・・せっかく、キリをつけたつもりでいたのに。
「・・・す、き」
とにかく、トロフィーと賞状を受け取ろうと手を出した瞬間。
声が聞こえた。
聞き覚えのある声が。
・・・気のせいだろうか?
立花の・・・声が聞こえる。
「・・・好き」
気のせいなんかじゃない。
間違いなく立花だった。