【完】君に贈る歌
「そうだ!翔太!!次お前歌えよ!」
今歌っていた歌が終わったのか、圭介は俺にマイクを差し出してくる。
「いや、俺はいい」
「なんだよ!俺お前とカラオケ何回か来たけど、お前の歌聞いてないんだよ」
「聞かなくていいから」
「あたしも聞きたいかも!」
「私も!」
女子たちは圭介に便乗してきた。
少し雰囲気的にマイクを受け取りそうになったが、すぐに手放す。
駄目だ。
歌だけは駄目だ。
「なんでそんなに嫌なんだよ翔太!」
「嫌っていうか、俺は女子の歌声聞いて癒されたいんだよ」
その言葉がきっかけで、女子のマイク争奪戦が始まったのは言うまでもない。
「翔太って逃げるの上手いよな・・・」
「そうか?」
圭介はマイク争奪戦の中を生き残れない気がしたのか、俺の隣に腰を下ろす。
「で?本当の理由は?」
「別に」
「あるんだろ」
「ない」
「親友に話せないようなことなのか?」
「・・・俺、音痴なんだよ」
「は?」
「何回も言わせないでくれ」
俺の言葉を聞くと圭介は大きな声で笑い出した。