【完】君に贈る歌
幸いにも歌の盛り上がり部分で圭介が笑ってくれたおかげか、女子たちは気付いていない。
「お、おまっ・・・そんな・・・あはははっ」
「・・・だから言いたくなかったんだよ」
そう。
俺は極度の音痴だ。
スポーツ万能、勉強もできるし、男女ともに関わりあえる。
陰で俺はそう言われている。
自分でも見た目が格別悪い方だと思わないし、声だって別に悪いと思わない。
スポーツだって好きだし、勉強もテストは常に90点は取れる。
男子も女子もめちゃくちゃ嫌いな奴はいないから、普通に関わることだってできる。
昔、いつだったか誰かに「橘って欠点ないよな」と言われたことがあった。
俺も少なくとも苦手なものはないと思ってたし。
だけど、ある日気付いたんだ。
自分が極度の音痴だと言う事に。
リズムは取れないし、音程も定まらない。
声だって震える時もあるし、高音なんて出ない。
ひどい時は出だしから間違える。
いや、全部間違えている。
とにかくリズムが取れてないからカラオケのイントロについていけない。
でもリズムゲーはなんなくクリアできる。
どうしてカラオケだと出来ないんだ。
何度そう思った事か。