【完】君に贈る歌
翌日の朝。
隣の席に立花はちゃんといた。
昨日どうしたのか、そう聞こうとしたけど高橋の存在が気になり聞くにも聞けない。
「立花ちゃーん!」
嬉しそうに教室に入ってきたのは圭介だ。
・・・もうこのクラス中にはバレバレなんだろうな。
圭介が立花に好意を抱いてるって。
「昨日どうしたの?具合悪くて休んだとか?」
「・・・」
圭介の言葉に立花は少し困った顔をした。
「圭介。無理に聞くなよ」
「いやだってさ・・・気になるじゃん」
「言いたくない事だってあるだろ。俺にも、圭介にも」
「そりゃそうだけど」
立花は俺らのやり取りをみてぺこりと頭を下げて、何故か教室を出て行った。
「ちょっと!」
「あ、高橋」
それを遠くから見ていたのか、高橋が俺らに話しかけてきた。
腕を組み仁王立ち状態だ。
目つきは鋭い。
「あ、高橋。じゃない!!立花桔梗に近づかないでって言ったでしょ」
「渡さないとは言われたけど近づかないでとは言われてないよ」
「渡さないの中にその意味も含まれてたの!!」
「・・・そもそも席隣だから近づかないでと言われても」
「だったら今すぐあたしとかわって!」
「むちゃくちゃだなぁ。なんでそこまで俺を毛嫌うんだよ」
「・・・うるさい!」
昨日のカラオケにいた時とは、まるで別人のようになってしまった高橋の後ろ姿を、俺は見つめるしかなかった。