【完】君に贈る歌
二人は音楽室に消えていった。
俺は急いで後を追いかける。
「っと・・・圭介にメールしとくか」
圭介に短く簡潔にメールを送った後、二人に気付かれないよう音楽室を覗いた。
二人以外誰もいない音楽室。
幸いここら辺の教室は特別教室な為、今の時間帯はほとんど誰もいない。
だから声もよく聞こえてきた。
「ねぇ、もう一度聞かせてよ」
「・・・」
「立花さんの天使の歌声・・・。あたしだけに歌ってよ」
立花はふるふると顔を横に振った。
"天使の歌声"という言葉に少し興味が湧いたが、どうやら歌ってはくれないようだ。
「いいじゃん!一回は聞いたんだし、慣れちゃえば大丈夫!それにほら、あたしたちもう友達ってことでいいじゃん!」
「・・・」
「あたし、立花さんの歌に救われたの。だからもう一度・・・お願い」
立花が拒否してもなお、高橋は引き下がらない。
何がそこまで高橋を動かしているのだろう。
「立花さんが歌ってくれないなら、この前話したアレ実行するよ?」
「・・・!!」
立花は何故かびくっとなり、少しだけ泣きそうな目で高橋を見つめる。
「いいの?」
ふるふると顔を横に振り、何かを決心した様子だ。
「良かった。最近近くにいるあの橘君と小沢君の最低な噂を流さないかわりにっていう事言えばきっと歌ってくれるって思ってた」