【完】君に贈る歌
俺は高橋のその言葉を聞いた瞬間、二人の前に飛び出していた。
ちょうどその時圭介も到着したようだ。
走ってきたのか息があがっている。
「・・・!?」
俺達の登場に立花は驚いていた。
もちろん高橋も。
「あ、あんたたち・・・今の聞いてたの?」
「聞いてたよ。バッチリな」
「お、俺は何がなんだか・・・」
圭介が分からないと言いかけた時、俺は思い切り圭介のすねを蹴った。
「いってぇ!!!!」
痛みに悶える圭介。
今下手な事言われても困るし、黙っててもらわなければいけない。
「最初から最後まで聞いてた」
そう言いながらゆっくり立花に近づき、長くて綺麗な黒髪をふわっと撫でた。
「ありがとな」
立花は少しうつむいて、小さく頷いた。
俺はそれを見届けた後に高橋に向き直り、にこりと笑う。
「俺の悪い噂流せるもんなら流してみろ」
「・・・っ」
「お前の言葉を一体何人信じてくれるんだろうなぁ?」
「う、うるさい!あたしは・・・あたしはただ・・・!」
「ただ友達になりたかった。ただ歌声が聞きたかった。それだけの理由で人に交換条件を出すのか?」
「なっ・・・」
高橋の目にはどんどんと涙があふれ出してくる。
そして最後には子供のように大泣きはじめた。