【完】君に贈る歌
*
「さっさと俺に状況を説明しろ!」
そう叫んだのは圭介だった。
昼休みになった今、俺達は屋上に来ている。
立花と俺と圭介と高橋四人で。
「そう怒って言うなよ」
「怒るだろ誰でも!いきなりすね蹴られたら!」
未だに痛いのかまだ自分のすねをさすっている。
俺はさっき買ってきたエビカツサンドを口にほおばりながら、高橋を指さした。
「詳しい事は俺より高橋が知ってるから説明してもらえ」
高橋は申し訳ないと思っているのかずっと下を向いていた。
「ほら、高橋」
「・・・わかった」
高橋は姿勢をよくして正座のまま話しはじめた。
「あたし、前彼に振られて自暴自棄になってたの。立花さんは分かんないと思うけど・・・一個上の先輩で沢崎先輩って人がいてね。その人とあたし付き合ってたんだ」
「沢崎って・・・あの沢崎!?」
圭介は目を見開きながら高橋を見た。
すねの痛みはどこかへ飛んでいってしまったようにも見える。
「かっこよくて、紳士で、頭もいい。だけど女の子をとっかえひっかえしてる最低な先輩を、あたしは好きになっちゃったの。で、告白したらOKされて・・・。先輩は最低だって頭では分かってたのに、お金もたくさん貢いだし初めてだって捧げちゃったの」
「ばっかだなぁ・・・高橋お前本当馬鹿だよ!」
圭介も一度沢崎先輩とやらに彼女をとられた事があり、一晩中電話で愚痴を吐かれた。
だから俺にとっても沢崎先輩は憎むべき人だ。
せっかくの睡眠を奪われたんだから。