【完】君に贈る歌
「好きになったら止められない。小沢君だってそうでしょ?」
「そ、それは否定しないけど」
「それそれ。あたしはまさにそれだった」
「だからって沢崎かぁ・・・」
立花はよく分からないといった風に俺らの話を聞きながら弁当をつついている。
「別れた理由は?」
「おいおい翔太。そんなのあいつだから分かるだろ?他の女と浮気したに決まってんじゃん」
「まぁ、そうだろうけど」
「そんな感じ。あたしが少し先輩を脅かそうとして内緒で家にあがって、部屋に入ったことがきっかけ。ベットの中で他の女とシてたの。そんなの目の前で見ちゃったら・・・」
顔を両手で覆い、高橋は再び涙を流し始めた。
せっかく泣きやんだと思ったのに・・・。
俺は持っていたポケットティッシュを高橋に投げた。
「ありがと」
渡したポケットティッシュを全て使いきった高橋は、もう一度話し始めた。
・・・ポケットティッシュの事は触れないでおこう。
「バイト代でせっかく貯めてたお金もあの人につぎ込んで、なのに裏切られて。あたしは絶望の淵にいた。・・・死のうかなとかも思ってたの」
「沢崎みたいな奴の事で死ぬなんてもったいねぇよ。良かった高橋が死んでなくて」
「あはは、本当そうだよね。あたしもそう思う。でね?そんな中、音楽室の前を通ったらすっごく綺麗な歌が聞こえてきたの」
そう言って高橋は立花を見つめる。
「あたしが自殺しなかったのも、元気を取り戻したのも、全部立花さんのおかげなの」
だからもう一度だけ歌を聞かせてほしかった。
お礼を言いたかった。
友達になりたい。
たくさんの思いをぶちまけた高橋を、立花は笑顔で受け入れた。