【完】君に贈る歌
「?」
「どうして喋んないの?」
「・・・!」
「言いたくないなら別にいい」
「・・・」
「だったら聞くなって感じだよな。ごめん」
立花は最後に残していたウインナーの一口分を食べきった後、弁当箱をしまいながら息を吸い込んだ。
その瞬間から広がったのは、
甘い甘い、高く透き通った歌声。
風にのってどこかへ飛んでいってしまいそうな優しい歌。
例えるなら天使。
"天使の歌声"
高橋がそう言っていたのも納得できる。
だけどその天使の歌声は
同時に俺にとって
悪魔の歌声にもなった。
立花の歌を聞いた途端に、過去に一度道を踏み外した時の記憶が一気に蘇ってきたんだ。
決して忘れたわけじゃない。
罪は背負っていくつもりだった。
だけど、その罪を洗い流されそうになって怖くなった。
立花の歌に、声に浄化されてしまいそうで。