【完】君に贈る歌
白いカッターシャツに赤色のネクタイ。
紺色のブレザーとズボン。
全て着なれた制服だ。
「・・・まだ早いけど暇だし学校行くか」
俺の通っている高校までは徒歩15分程度。
まだ時間は早いけど校門は開いているだろう。
持ち慣れた鞄を肩にかけ、いつもの靴を履く。
そして家の玄関を開けて外に出ようとした。
タイミングを見計らったように、ぶわっと春の香りが風と共に入ってきた。
「無駄にいい天気だな」
一人呟きながら扉に鍵をかけ、一歩を踏み出した。
春を感じながら歩く学校までの道は少しだけ気持ちが軽くなる。
何も考えなくてもいいから。
だけど今日は何かがひっかかる。
この違和感はどこからくるのだろうか。
毎日通っている通学の道。
変わらない風景。
何がいつもと違うのか。
ピタッと俺が立ち止まると、背中に誰かがぶつかってきた。
「・・・ん?」
後ろを振り返り少し目線を下にすると、そこには俺の高校の制服を着た長い黒髪の女の子がいた。