【完】君に贈る歌
登下校も常についてくる。
今もそうだ。
俺は鞄を持たなくて済むからこいつと一緒にいる事にしている。
離れていかないなら利用すればいい。それだけだ。
「翔太!大好きだよ」
「俺は嫌いだ」
「・・・ふふっうん!」
「何笑ってんだよ気持ち悪い」
「嫌いの反対は好きだから」
そうやっていつも俺の嫌いという言葉を待ち望んでいた。
いつの間にか俺の事を翔太と呼ぶところも、俺がこいつを名前で呼んでしまうところも訳が分からない。
「さやか、ジュース奢れ」
「はいはーい♪」
恋人でも、友達でもない関係。
これは一体何というのだろう。
「はい!」
「そうそう。分かってきたじゃん。俺コーラ大好き」
ぷしゅっと音を立ててペットボトルのふたを開ける。
「うん!翔太"甘いもの"大好きだもんね」
「・・・嫌いだよ」
ごくごくと喉を通っていく炭酸がはじけた。