【完】君に贈る歌
「今度コーラ味のクッキー作ろうかなぁ?」
「は?馬鹿だろ。ありえねぇ」
「えー?でも頑張れば・・・」
「俺は絶対食わないからな」
「・・・ぶー!これだって食べてくれないくせに!」
さやかはずいっとさっきの袋を俺の目の前に出してくる。
俺はそれをまじまじと見つめ、がしっと受け取った。
「食べてくれるの!?」
「うるせぇ」
「やったぁ・・・初めて受け取ってくれたね!」
この時、俺ははっとして
持っていた袋を下に落とした。
「翔太?」
笑顔を絶やさないこいつを見ているとイライラして、無性に胸が苦しくなった。
「・・・食うわけねぇだろこんなもの」
下に落ちた袋を汚い靴で何度も何度も踏む。
中からクッキーのカスが出てくる。
カラフルなラッピングはほどけ、ぐちゃぐちゃだ。
傷つけばいい。
これで俺から離れてくれればいい。
泣いて、俺をぶったたいて、この場から走り去ればいい。
そう思っていたのに。
「馬鹿だなぁ翔太。そんなに踏んだら翔太の靴が汚くなっちゃうでしょ?」
さやかはもう汚い俺の靴を自分の持っていたハンカチで拭き始めた。