【完】君に贈る歌
ちょっとした冗談のつもりだった。
いや、少しは本気だったのかもしれない。
これ以上さやかの傍にいると、俺はさやかに自分を委ねて甘えてしまおうとしてしまうと考えたから。
だけど絶対そんな事しないと思っていた。
俺のためとか言っても、命なんて簡単に投げだせるものじゃない。
「・・・」
さやかは少し黙った後、にこりと微笑みこう言った。
「分かった!」
「・・・あ、いや」
俺が何かを言おうとした時、さやかは自分の人差指を俺の唇に置いた。
「大好きだよ、翔太」
これが最後に聞いたさやかの言葉。
ふわっと抱きしめられて、俺から離れていくさやかの後ろ姿は少し寂しそうにも見えた。
だけど止めなかった。
どうせ嘘だろうと思って。
死ぬわけがない。
明日も、明後日もずっとさやかは俺のうしろについてくると思っていた。
なんでもないのに俺の名前を呼んだり、俺を喜ばせようとしてくれたり、笑顔をみせてくれたり。
うっとおしいほどしてくれるんだと信じ切っていた。
だけど次の日。
担任から聞かされた第一声は・・・。
「皆、落ち着いて聞いてくれ。・・・昨日の夜、萩本が、萩本さやかが自殺した」