【完】君に贈る歌
目の前は真っ暗。
見えるのはさやかの笑顔。
嘘偽りのない純粋な笑顔だけ。
俺はどうしてあんな事を言ってしまったんだろう。
どうしてさやかを受け入れなかったんだろう。
自己嫌悪で何度も授業中トイレに行っては吐いてを繰り返した。
その度にさやかの顔がちらついて離れない。
『翔太!』
さやかに呼ばれている気がして何度も後ろを振り向いてみても、誰もいない。
「あの時、何故俺は」
冗談だった。
それだけで済めばいい。
だけど本気だった。
目の前から消えてほしかったんだ。
これ以上俺を見てほしくなかった。
「・・・俺は、さやかを殺した」
手のひらにこぼれるほどの涙を俺は流した。
誰にも知られないところで一人。
さやかのために泣いた。
浅はかな考えでさやかの命を奪った俺は、この罪を決して忘れてはいけないと心に誓ったんだ。
忘れたいだろう。
消したい過去になるだろう。
だけど、それだけは駄目だ。
さやかの笑顔を忘れてはいけない、俺自身の戒めの為に。
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