【完】君に贈る歌
・・・違和感はこれか。
俺の歩幅に合わせるように誰かが後ろからついてきていたのが、違和感の正体だった。
「見た事ない顔だね。一年生?・・・いや、三年生か?」
「・・・」
その子はふるふると頭を横に振る。
一年生でも三年生でもないということは二年生だ。
でも俺はこの子を一度でも学校で見た事はないはず。
確かに人数の多い高校だけど、同じ学年の顔と名前は俺なりに覚えたつもりだ。
「えっと、俺に何か用があったの?」
「・・・」
またふるふるとその子は頭を横に振った。
けど、少し戸惑う表情を見せる。
そして本当にかすかにその子は何かを呟いた。
ほとんど声は聞こえなかったが、俺は口の動きで何を言ったのかを把握する。
「転校生?」
「・・・」
その子は静かに頷いた。
転校生?
この時期に?
転校してくるなら新学期の始まる時期に一緒に入ってくるものじゃないのか?
俺の学校で言ったら先週。
なんでこんなに中途半端な時期に・・・。
「学校までの道のりが分からないから、同じ制服の俺の後をつけてきたのかな?」
「・・・」
再びこくりと頷く。
「だったら最初から声をかけてくれればよかったのに。いいよ、連れてってあげる。おいで」
俺の言葉を聞きとったその子は
さっきとは違い、俺の横で遠慮がちに歩き始めた。