【完】君に贈る歌
俺は足が固まって動かなかった。
前、高橋に絡まれていた時は自然と足が前に進んだのに。
「っつーか本当なんか喋れよ」
「そうだ!このはさみでこいつの髪の毛切ってみない?」
「おお!私将来美容師なりたいから綺麗に可愛く切ってあげるよ~?」
「うっわーかわいそう」
助けなければいけない。
瞬間的にそう思った。
だけど体は言う事をきかない。
体が動かない代わりに、頭の中で立花の歌が聞こえた。
俺はその雑念を振り払おうと頭を横に振ってみる。
だけど消えない。
同時にさやかの笑顔が脳裏に浮かんだ。
立花の笑顔と重なる。
このまま俺は・・・。
『翔太』
全ての雑念が消えて優しい声が聞こえた。
その声に後押しされ、俺は一歩を踏み出す。
「もうやめろ」