【完】君に贈る歌


目の前にいる立花があの時のさやかとダブった。


今俺から抱きしめないと、いなくなってしまう。

そう勝手に感じとった。


そんなわけないのに。



「橘君?」


いつの間にか俺は立花を抱きしめていた。


「ごめん」


「なんで・・・?」


「ごめん」


「分かんない。苦しいよ、離して」


「ごめん」




『さやか、ごめん』



俺はさやかに謝っている気分でいた。


死なせてごめん。

突き放してごめん。

想いを受け取ってやれなくてごめん。




今までそれなりに平穏に過ごしてきた高校生活。



それは今、いやもっと前から終わりを告げていた。





形だけの家族。
さやかの死。
俺の罪と罰。




立花桔梗と出会った事で今までの自分が自分じゃなくなってきている。




「立花。俺、お前が・・・好きだ」


俺は自分が自分でなくなる前に、

目の前で震えている立花を壊すと決めた───。
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