【完】君に贈る歌
◇偽りの毎日
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テスト一週間前。
いつの間にか汗がにじみ出る季節になった。
このテストさえ終わればもうすぐ夏休みだ。
「ああ・・・分かんねぇ。全然分かんねぇ!!」
圭介が珍しく俺に勉強を教えてほしいということで、急遽勉強会もどきを開くことになった。
メンバーはいつも通り。
立花、俺、高橋、圭介。
俺は勉強であまり苦になった事はなく、今回のテストも楽勝だろう。
高橋もそれなりに頭が良いらしく教える側に回っている。
その隣で必死に数学の公式を覚えているのが立花。
立花はあまり頭が良くないようでこの学校に転校してくる時のテストも危うかったらしい。
圭介はもちろん生粋の馬鹿だ。
俺が何度教えても同じ所でつまづいて、結局大声で叫ぶ始末。
「叫ぶ時間があるなら記憶しろ」
「くっそぉ・・・翔太の脳みそ半分分けてくれよぉ」
机と机をくっつけて俺と立花は真向かいにいる。
俺の右隣りの圭介の言葉に慌てて頷いた。
「立花もそうやって頷いてる暇があったら覚えた方がいいよ。幸い圭介ほどの頭じゃないようだし、赤点は回避できると思う」
「どういう意味だよ翔太ぁぁ!それは俺が赤点をとるっていう予言かこら!」
「しょうがないだろ。馬鹿なんだから」
「言ったな!?今言ったな!?」
圭介は一旦は話したシャーペンをもう一度握り、自分の机に集中した。
だけど5秒もたたないうちに「無理だああああ」と言ってシャーペンを机の上に投げつけたのだった。