【完】君に贈る歌
色々聞きだしたい気持ちを抑えて、俺も学校までの道を歩く。
無言で登校すること15分。
俺の通う学校が見えてきた。
「ここだよ」
時間はまだ早く生徒はほとんど登校していない。
校門に立つ先生たちもまだいなかった。
黒髪ロングの女の子はぺこりと頭を下げた後、小走りで職員玄関まで走っていった。
「あっ・・・名前!」
俺の声は聞こえなかったのか、振り向くことはせずに校舎内に入ってしまった。
「せめて名前くらい聞こうと思ってたんだけど・・・。まぁいっか」
生徒玄関で靴を脱ぎ、下駄箱にいれる。
校舎内用のスリッパを履いて自分の教室に向かった。
どの教室もまだ人の気配はなくガランとしている。
いつもは騒がしい学校が別のところのようだ。
教室につくと、
窓際の一番後ろの席に座った。
ここは俺の特等席。
「・・・ふぅ」
鞄を机の横にかけ、机の上に上半身を預ける。
すっと、さっきまでなかった眠気が俺を襲った。
重くなる瞼の裏にさっきの女の子の姿が最後まで浮かんでいる事に気がつくはずもなく、俺は眠りに落ちた。