【完】君に贈る歌
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「なぁ、後悔先立たずって言葉知ってるんだぜ俺」
大の字になって寝ころぶ圭介がぽつりと言った。
まだ少しだけ残っている菓子やジュースを皆で袋に入れ、誰がどれを持ち帰るかを決めた後、少しだけ屋上で空を見ようということになって今に至る。
「馬鹿でも分かるんだな。ま、明日もあるしいいんじゃないか?死ぬ気で勉強すれば」
俺はそう圭介に言って隣に座る。
「はぁ・・・勘弁してくれよ」
赤点をとってしまうとどうなるかは、よく圭介から聞いている。
夏休みがほとんどなくなるらしい。
さすがにそれは同情してしまう。
ふと気がつくと、俺の隣の方で高橋と立花が肩を寄せ合っていた。
「夏に近いからってこの時間帯少し寒い感じがするなぁ、桔梗大丈夫?寒くない?」
「・・・」
全く寒さを感じない俺は立花が頷く事に疑問をもった。
圭介も大の字になりながらカッターシャツをパタパタと仰いでいる。
「そろそろ暗いし立花ちゃん帰った方がいいんじゃないー?」
「ちょっと!あたしの名前がないんですけど?」
「高橋はいいんだよ。襲われる心配とかないから安心しろって笑」
「本当小沢君って最低!」
圭介の言う通りすっかり日は落ち、辺りは暗くなっている。
「そこ、言い合ってないで帰るぞ」
俺は立ち上がり際に二人の言い合いを止め、屋上の扉を開けようとした。
しかし、何度ドアノブをガチャガチャしても開かない。
「おいおい翔太冗談やめろって。キツイぜ」
「冗談なんかじゃないよ・・・。やってみろよ」
圭介が挑戦しても同じ結果。
どうやら俺達は屋上に取り残されてしまったらしい。