【完】君に贈る歌


**


「なぁ、後悔先立たずって言葉知ってるんだぜ俺」


大の字になって寝ころぶ圭介がぽつりと言った。


まだ少しだけ残っている菓子やジュースを皆で袋に入れ、誰がどれを持ち帰るかを決めた後、少しだけ屋上で空を見ようということになって今に至る。



「馬鹿でも分かるんだな。ま、明日もあるしいいんじゃないか?死ぬ気で勉強すれば」

俺はそう圭介に言って隣に座る。


「はぁ・・・勘弁してくれよ」


赤点をとってしまうとどうなるかは、よく圭介から聞いている。

夏休みがほとんどなくなるらしい。


さすがにそれは同情してしまう。



ふと気がつくと、俺の隣の方で高橋と立花が肩を寄せ合っていた。


「夏に近いからってこの時間帯少し寒い感じがするなぁ、桔梗大丈夫?寒くない?」


「・・・」


全く寒さを感じない俺は立花が頷く事に疑問をもった。

圭介も大の字になりながらカッターシャツをパタパタと仰いでいる。




「そろそろ暗いし立花ちゃん帰った方がいいんじゃないー?」


「ちょっと!あたしの名前がないんですけど?」


「高橋はいいんだよ。襲われる心配とかないから安心しろって笑」


「本当小沢君って最低!」




圭介の言う通りすっかり日は落ち、辺りは暗くなっている。



「そこ、言い合ってないで帰るぞ」


俺は立ち上がり際に二人の言い合いを止め、屋上の扉を開けようとした。



しかし、何度ドアノブをガチャガチャしても開かない。


「おいおい翔太冗談やめろって。キツイぜ」


「冗談なんかじゃないよ・・・。やってみろよ」


圭介が挑戦しても同じ結果。


どうやら俺達は屋上に取り残されてしまったらしい。
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