【完】君に贈る歌
「こんな展開アリなのか!?俺今日バイトあるんだけど!」
圭介は腕時計を見て大声をあげる。
ついでに何度もドアノブをガチャガチャとしている。
「圭介落ち着けって!・・・おかしいな。施錠担当の先生が誰かいるかぐらい確認するはずなんだけど」
「・・・ちょっと待てよ?今日の施錠担当の先生ってあいつじゃないっけ?ほらおじいちゃん先生の森脇!!」
森脇先生。
通称、おじいちゃん先生。
来年定年で、どの生徒に対しても優しく接してくれる。
しかしどこか抜けていてプリントを印刷するのを忘れていたり、自分がやるべきことしか覚えていられない場合も多いために、よく生徒から逆に注意される事もしばしばある。
・・・あの人なら確かに確認したとしても、生徒の姿を見過ごしてしまう可能性は高い。
「あたしもうすぐ帰るってメールママにしちゃった・・・」
「じゃあ高橋の親に屋上の鍵をどうにかできるんじゃない?」
「それがね、ママ同級生の人と飲みに行っちゃって。パパも仕事で遅いし・・・。んもーっ!おじいちゃん先生の馬鹿っ!!普通気付くでしょ!?」
「森脇先生も俺らを閉じ込めたくてしたわけじゃないからさ、そんなに怒るなよ」
圭介の両親も海外暮らしだし、俺の家はどうせ連絡しても返ってこない。
時間が気になって携帯を開き確認する。
時刻は19時になろうとしていた。
「別に親じゃなくて誰でもいいから連絡してみよう」
俺の提案に圭介と高橋は頷いた。
しかし、俺の携帯は充電切れ。
圭介はあろうことか教室に置いてきたらしい。
立花は元から携帯を持っておらず連絡手段はない。
高橋は高橋で連絡してはいるが未だ連絡に気付いてくれた人はいない。
「はぁ・・・。俺、今日のバイト諦めるわ・・・」
「でも今のバイト先金いいんだろ?何も言わずに休むって駄目じゃないか?」
「そうだよ。翔太の言うとおりだよ!!だけどどうしようもねぇじゃん・・・」
「もう!!あたしの携帯貸すからぐちぐち言わないで!」
圭介は「高橋~助かったあああ!」と言ってバイト先に連絡をしはじめた。