【完】君に贈る歌
転校するにつれて立花は自分を閉じ込めるようになった。
声を褒められる度に自分の声を嫌いになり、歌も歌わないようにしていた。
誰も自分を必要としてくれない。
きっと自分は生まれてこなければよかった。
何度もそう思って自殺も考えていたらしい。
そんなある日。
立花は俺達の学校に転校してきた。
そこで初めて俺や圭介、高橋のような人に出会ったという。
「私、一目惚れかもしれないの」
「一目惚れ?」
「うん・・・。翔太君のこと」
「立花はそんなそぶり見せてこなかったけど?」
「自分の気持ちを抑えるのは得意になったから」
俺は立花に同情した。
憐れんだ。
可哀そうだと思った。
だけど反対に『ざまあみろ』と思ってしまった。
「私は翔太君の事信じてる。ずっと一緒にいてくれるよね・・・?」
「・・・ああ」
今俺は、立花にとってなくてはならない存在なのだろう。
そんなものは見てとれる。
「ありがとう」
にっこりと立花が微笑んだ。
俺は嘘の仮面を作り、立花に微笑み返した。