【完】君に贈る歌
◇傷
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立花を無理やり犯そうとしたあの日から、俺は立花を避けるようになった。
『もしもし翔太君?・・・あのね。この前の事だけど』
「あー・・・。ごめん、その話長くなる?」
『それは・・・その』
「俺ちょっとすごい忙しくてさ、もし長くなるなら今度にしてくれないかな」
『・・・分かった』
「じゃあ」
携帯電話を持っていない立花はきっとどこかの公衆電話で俺の携帯にかけてきてくれたのだろう。
こういうことがもう5回ほどあった。
「電話をかけるとき家からかけるのは親せきの人に申し訳ないから、だっけ」
まるで一昔前のラブドラマのようだ。
携帯電話を持っていないカップルが家族の目を盗んで電話をする。
少し今の状況はそれに似ている気がする。
「ん?メールか」
そんな時、俺の携帯にメールが届いた。
その内容はクラスの女子からの合コンを誘うメールだった。
「合コン・・・」
俺はすぐに誘いをOKする返信をした。
そして携帯を握りしめながら呟く。
「ごめん」
誰に対して謝ったのか、自分でも分からなかった。