【完】君に贈る歌
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結局。
残りの夏休み中に立花と会う事もなく、圭介や高橋にも会わなかった。
そして今日が夏休み明けの初日の学校。
「今日はお弁当作っておいたから持ってってね」
「どういう風の吹きまわし?」
「何言ってるの、貴方のママなんだから当たり前の事しただけ」
「・・・」
「じゃあ出かけてくるね!今日も遅くなるから夜ご飯どこかで食べるか、自分で作って食べなさい。お金はキッチンのシンクの上のお弁当の横に置いておいたから」
相変わらず母さんは浮気相手の元へおめかしして出かけるようだ。
父さんもとっくの昔に仕事に出ている。
今日は何故か母さんの手作り弁当が用意されていた。
言われたとおりにキッチンのシンクの上には弁当が一つとその横に一万円。
「何が貴方のママだよ・・・!」
俺は弁当を持ち上げ下に落とす。
それを何度も足で踏みつぶし、一万円を握りしめて家を出た。
俺の心には一体どれだけの傷が付いているのだろう。
確認する術もない。
・・・もう痛みも感じない。
「翔太」
俺が家を出たと同時に声をかけられた。
振り向くとそこには圭介。
「・・・久しぶり」
「ふざけんじゃねぇよてめぇ!!!」
罵声と共に下りてきたのは圭介の重い拳だった。