【完】君に贈る歌
何分か睨み合いが続き、圭介が馬乗りの体制を崩し立ち上がった。
「・・・俺、お前が立花ちゃんを幸せにしてくれるって信じてたんだぞ」
ぼそっと圭介が呟く。
俺は殴られて切れた唇の血をぬぐいながら立ち上がり、圭介に向き直る。
「幸せにしてやったよ。短時間だけど」
「・・・なんだと?」
「俺は最初から立花なんて好きじゃなかった。お前が立花を好きだと知っていて、奪った挙句裏切ったんだ。これで納得したか?簡潔に話してやったけど」
「てめぇ!!」
もう一度圭介が俺に掴みかかろうとした時。
「ストーーーップ!!」
聞きなれた声と共に俺らの間に一人の女子が割って入ってきた。
それはいつの間にいたのか、高橋だった。
「高橋、なんで止めるんだよ!高橋だって知ってるだろ!?翔太が立花ちゃんを傷つけた事!!」
「知ってるけど!!!だからって殴り合いしていいとは誰も言ってないでしょ!」
「だけど!」
「暴力でこれが解決するの!?だったら橘君をぼっこぼこにする?病院送りにするまで殴り続ける?余計に桔梗が傷つくんじゃないのそれ!」
「・・・くそっ」
高橋の言葉に圭介は仕方なく応じ、俺に背を向けた。
「ふぅ・・・。それで橘君」
「何」
「これ」
高橋から見せてもらったのは、携帯の画像。
上半身裸の俺と北山彩加の姿が写った写真だった。
「・・・いつの間に」
「ってことはこれは合成とかじゃなくて本物って事だよね?」
「・・・」
俺は特に弁解するわけでもなく淡々と頷いた。