【完】君に贈る歌
「どうして?」
「・・・理由なんてないよ」
「桔梗は橘君が好きだった。本気で!それはあたしもたくさん話聞いたから分かってたの!橘君とデートしてきたとか、今まで全く喋らなかった桔梗がたくさん喋るようになって・・・。笑顔も増えて。やっとあたしにも過去を教えてくれるようにもなった!」
「・・・」
「だけどね?この写真で橘君の隣に写ってる女の子がこの写真を色んな友達の携帯に送ってあっという間に広がった。もちろんあたしの手にも小沢君の手にも届いたよ?・・・この真っ直ぐでバカな小沢君が桔梗に慌ててこの写真を見せちゃったの。だから桔梗も知ってる」
「バカじゃねぇし!携帯持ってない立花ちゃんに見せるのは当たり前の事だろ!?」
「黙ってて!」
「・・・んだよ!」
「そっからが問題。桔梗は、この写真を見せてもらった後気を失ったの。あたしもその場に合流した直後だった。・・・そして桔梗は全然目を覚まさなくて、救急車で運ばれた」
「救急車!?」
俺は思わず高橋の肩を掴んで揺すった。
「大丈夫なのか!?立花は・・・何があったんだよ!写真見ただけでなんで倒れるんだよ!なぁ、今どうなってるんだ!」
「失声症」
「・・・え?」
「桔梗は声を失ったの」
俺は高橋の肩から手を離し、その場に座り込んだ。
自分の体から全ての力が抜けた瞬間だった。
立花を傷つける。
それが俺の目標だった。
俺の罪と罰を背負わせてくれない存在だと勝手に思っていたから。
それだけで気持ちを弄び、挙句の果てに立花の一番大切なものを奪ってしまった。
俺にとっても、今思うと立花の声は・・・歌は・・・。
俺の全てだったのかもしれない。