【完】君に贈る歌


「・・・」


立花はゆっくりと俺の方を向いて、少し目を見開く。

立花の姿を見たのは本当に久しぶりだった。



「あ!?なんで入ったら駄目なんだよ!」


「大きな声出さないの!ほら行くよ!」



俺を一人病室に残して高橋は圭介を連れてどこかへ行ってしまった。


「あ・・・」


突然俺は立花と二人きりになってしまい戸惑った。


顔をしっかり見る事ができない。

話しかける事もできない。


俺が何を言えるのだろう。
どんな言葉をかければいいのだろう。



だんだんとこの場にいる事が苦痛になってきた俺は病室を出ようと扉に近づいた時、立花が手を伸ばし俺の服の裾を引っ張った。



「・・・っ」


俺はその場から動けなくなった。

どうしていいのか分からず、ただただそこに突っ立っているしかない。




俺はうつむき病室の床を見つめる。

謝ったところで立花が許してくれるわけがない。


何をどう説明して謝ればいいのかも分からない。




浮気してごめん?


違う。


傷つけてごめん?


違う。


裏切ってごめん?


違う。


嘘ついてごめん?


違う。違う。違う。
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