【完】君に贈る歌


俺は両手を固く握りしめた。


強く強く。

下唇も噛んで、血が滲んできた。



何をどう考えても行きつく先は暗闇。


そんな時、トントンと背中を叩かれた。

俺は立花の顔を見ないよう振り返る。



すると俺の目の前には一冊のノートが差しだされていた。


震える右手でそのノートを受け取り中を見る。


1ページ目に立花の丸くて可愛らしい字があった。

ふと勉強会もどきの事を思い出しては消えていく。



そしてノートに書かれている内容を自分で理解し始めた。




『翔太君。久しぶり』



そう書かれてあった。


どこをどう見てもそれだけしか書かれていない。




「・・・え」


俺は思わず立花の顔を見る。


立花は俺と目が合い、にっこりとほほ笑んだ。





「なんで・・・。なんで笑えるんだよ。俺はお前を・・・」



俺の言葉を聞くとすぐに立花がノートを俺から取り、ボールペンで何かを書き始める。



再びノートを差し出されその中身を見ると、こう書いてあった。




『私は大丈夫。声出なくなっちゃったけど、こうして翔太君に会えたから』



何故。

立花はこんなにも・・・。


「ごめん・・・立花。本当に・・・」


何度もごめんを繰り返し、止まらない涙を流し続けた。

立花は慌てて俺の背中をさすってくれた。


< 79 / 150 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop