【完】君に贈る歌
俺は両手を固く握りしめた。
強く強く。
下唇も噛んで、血が滲んできた。
何をどう考えても行きつく先は暗闇。
そんな時、トントンと背中を叩かれた。
俺は立花の顔を見ないよう振り返る。
すると俺の目の前には一冊のノートが差しだされていた。
震える右手でそのノートを受け取り中を見る。
1ページ目に立花の丸くて可愛らしい字があった。
ふと勉強会もどきの事を思い出しては消えていく。
そしてノートに書かれている内容を自分で理解し始めた。
『翔太君。久しぶり』
そう書かれてあった。
どこをどう見てもそれだけしか書かれていない。
「・・・え」
俺は思わず立花の顔を見る。
立花は俺と目が合い、にっこりとほほ笑んだ。
「なんで・・・。なんで笑えるんだよ。俺はお前を・・・」
俺の言葉を聞くとすぐに立花がノートを俺から取り、ボールペンで何かを書き始める。
再びノートを差し出されその中身を見ると、こう書いてあった。
『私は大丈夫。声出なくなっちゃったけど、こうして翔太君に会えたから』
何故。
立花はこんなにも・・・。
「ごめん・・・立花。本当に・・・」
何度もごめんを繰り返し、止まらない涙を流し続けた。
立花は慌てて俺の背中をさすってくれた。