【完】君に贈る歌



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目を覚まして声を出そうとしたら出なくて最初はパニックになってた。


だけど芽衣子ちゃんとか小沢君が励ましてくれて、なんとか落ち着いてこんな風に文字を書けば相手に思いを伝えられるって考える事ができた。






・・・私、翔太君と過ごすうちに自分の声が好きになっていったの。


なんでなのかは分からない。

だけど、自分の声をちゃんと出して話したいって心から思った。



お父さんやお母さんに捨てられた時から自分が、声が大嫌いだった私がだよ。


この過去の話だって自分の中だけに留めようとしてたんだけど、翔太君や芽衣子ちゃんたちになら大丈夫だって思えた。


おかげで、話してとっても心が軽くなった。


重い話なのにちゃんと話を聞いてくれて嬉しかった。







私ね?
ずっと皆の知らないところでもう一度自分に向き直りたくて、歌を練習し始めたの。


全然練習してなかったから声も全然出ないし、昔出来ていた事が出来なくなってた。




だけどね。

不思議と翔太君の事を思い浮かべながら歌うと自然に声が出た。


自分でもいいなって思える歌声が出せるようになった。




それから私は、付き合う前に保健室で翔太君がもう一度私の歌を聞くって言ってくれた時の事を思い出して、今度の翔太君の誕生日にテレビの前で歌おうって決めたの。



12月24日


心に残る誕生日にしてあげたいなって。


それは今でもそう思ってる。



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