【完】君に贈る歌
いきなりの告白に俺は驚いた。
高橋が圭介を?
そんな風には見えた事は一度もなかった。
仲のいい。
本当にただの友達に見えていた。
だけどやっぱり人の心は分からない。
嫌いなように見せかけていても実は好きだったり、好きなように見せかけていても実は嫌いだったりする。
少し前の俺が後者で、今の高橋が前者だ。
「いつから好きだったんだよ」
「馬鹿みたいだけど、最近分かったの」
「最近?」
「桔梗が声を失くして、小沢君が熱心に桔梗の傍にいるところを見て気付いちゃった」
「・・・」
「遅いよね。いっつもあたしは」
少し目に涙をためながら高橋は空を仰ぐ。
きっと泣かないためだろう。
「高橋・・・俺は」
「分かってる!大丈夫!ごめんね弱気になっちゃって」
高橋はたまった涙を手の甲でぬぐった後、気合いを入れてこう言った。
「よし!その橘君の歌練習付き合っちゃうよ!」
高橋の言葉に俺は少し嬉しくなった。
何故なら俺は相当の音痴だから。
自分で歌うと覚悟を決めたものの、実際どこからどう始めればいいのか分からない。
だから仲間がいるととても助かる。
でも、辛かった。
俺は高橋の恋をどうしてやる事もできない。
なのに俺だけが力を貸してもらってもいいのだろうか。
それに・・・これは本当は俺一人でやらなければいけない事なんじゃないだろうか。