【完】君に贈る歌


**


某カラオケ店。


「・・・」



俺の歌声を聞いた後、高橋は口を半開きにして数分間俺の事を見つめていた。


「やっぱり、無理かな」


「あはは・・・」


「・・・無謀だよな」


「いける!いけるよきっと。あたしがついてるんだから大丈夫!」




そう言った高橋は気を取り直して俺にあれこれ説明し始めた。


高橋の説明の仕方はとても分かりやすく、すぐ実践できるようになる。




「そうそう!それで音を合わせるの」


「本当だ。できる!」


「橘君頭いいんだから、すぐにこんなの覚えちゃえば誰よりも上手くなっちゃうよ!?」


「いやいや・・・」




それから何度も何度も音を聞き、歌ってみた。


しかし、音程がたびたび外れてしまう。

高い音もしっかり出せず震える。




頭の中ではこうしたいというものが浮かんでいるのに、どうしようもできないこのもどかしさ。



「リズムはとれてるんだからいけるいける!」


俺に合わせて高橋が歌ってくれる。

高橋がガイド代わりになり、歌いやすい。


少し音程も取れてきたきがする。



でも高橋が抜けた途端、俺はあっという間に音程が迷子になってしまった。
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