【完】君に贈る歌
*
「yの公式にxをあてはめて・・・」
長い長い数学の時間。
俺はもう出された問題をとっくに解き終わっていた。
授業中に堂々と俺のところまできて答えをうつす圭介の姿はすがすがしい。
先生も諦めモードだ。
周りも気にせず自分で問題に取り組んでいる。
隣に座っている立花も既に解き終えていた。
「立花ちゃんも解けたのか!すっげぇ!」
「声でかい。一応今授業中なんだからさっさと席戻れよ」
「いいじゃんかよ!立花ちゃんの字可愛いね!」
何も答えてくれない立花にめげずに話しかける圭介の姿は、この時間外でももちろんあった。
他の授業中はもちろん俺の席までやってきて、何かと理由をつけ、立花に話しかける。
休み時間、昼休みはもちろん。
俺は立花が教室を出て行った時を見計らって、圭介の話を聞いてみた。
「お前立花に構いすぎだと思うけど」
「あ、バレちゃった?」
「誰がどう見てもバレバレだ」
「いやぁ、あの子全然俺に反応返してくれないし雰囲気もあまり明るいとは言えないんだけど・・・よく見たら可愛いんだよね」
「・・・で?」
「んー。なんかミステリアスで気に入った!」
「・・・だから?」
「簡単に言うと惚れた!」
圭介の言葉に俺はため息をついた。