【完】君に贈る歌
俺は笑顔で「ありがとう」と言った。
「・・・うるせぇ」
圭介は照れながらもいまだに耳たぶを触っている。
その姿がおかしくて笑ってしまった。
そんな俺を見てか、圭介も笑い始める。
状況が理解できてないのだろう、高橋が慌て始めた。
「な、何!?今ので仲直りしたってことなの!?」
「はぁ?高橋マジ何言ってんの。・・・元から俺らは喧嘩なんてしてない。俺がただ意地張ってただけだよ」
「圭介。・・・本当にありがとう」
もう二度と昔のように戻れることはないと思った。
二人でバカし合って、でもそれが面白くて。
楽しかった日々。
今でもあの頃と同じような時間が過ごせるのかと問われると微妙だ。
だけど、今圭介は目の前で笑っている。
俺の目をしっかりと見てくれている。
親友を裏切った俺を、親友が本気で愛した人を奪った俺を。
こいつは今笑って許してくれている。
圭介の言うとおり喧嘩をしていたわけじゃない。
でも圭介が意地を張っていたからというわけでもない。
全部を裏切った俺が全ての元凶だ。
「翔太の口からありがとうなんて気持ちわりぃなぁ」
「俺はいつでも好青年だったと思うけど」
「うっわ自分で言うかよ普通」
俺らの姿を見た高橋はほっとした様子だった。
この機会を作ってくれた高橋にも感謝しなければいけない。