【完】君に贈る歌
「あのさ・・・。今日はもう切り上げにしない?」
いきなり高橋はそう言ったかと思うと立ちあがった。
「え、でも俺今日全然歌えてないよ」
「大丈夫。あんだけ歌えてたんだから。時間もまだまだあるんだし!っていってもめちゃくちゃあるってわけじゃないけど。・・・でもさ、男同士で募る話もあるんじゃない?」
そう言ってウインクする高橋は、まるで俺と立花の仲を応援してくれていた頃の圭介に似ていた。
「翔太が練習したいってんなら俺はその話には乗らねぇ。・・・てか、別に今更話す事なんてねぇだろ」
「小沢君は黙ってて」
「はぁ!?俺の回答権はなしかよ」
「ははっ・・・。切り上げよう。高橋の話に乗るよ」
「ちょっ・・・翔太いいのかよ」
「いいんだよ。話したい事これでも結構いっぱいあるんだから」
「じゃあ決まりだね♪じゃっ今日はあたしがお金払っといてあげる!あとは二人でごゆっくり~」
高橋はひらひらと手を振りながらBOXを出ていった。
俺と圭介は目を合わせて苦笑いをしながら後に続く。
早いもので俺らが受付前を通る時には、高橋が会計を済ませてカラオケ店を出ていった後だった。
「高橋早すぎだろ・・・。ったくあいつは」
「まぁまぁ。高橋のおかげで俺圭介とこうやって話せたし。話せるし。すごく感謝してるよ」
「・・・まぁな」
カラオケ店を出て帰り道を歩く。
何気ない話をぽつりぽつりとお互いが切り出すけど、なかなか続かない。
やっぱりまだ気まずい空気が漂っている。