【完】君に贈る歌
「翔太はさ、あれから桔梗の病室・・・見舞いにいってねぇの?」
圭介は気まずい空気を打ち破りそう話を振ってきた。
それにも驚いたけど、そんなことよりも苦しかったのは立花のことを名前で呼んでいること。
あんなにも"立花ちゃん"と呼んでいた圭介。
平然と"桔梗"と呼んでいる。
それほど親密な仲になったということなんだろう。
「行ってないよ」
気にしていない素振りで俺はそう答えた。
「そうか」
「おう」
「俺な。付き合おうって言ったんだ。桔梗に」
「・・・」
胸が早鐘のように鳴り始める。
別に二人が付き合っても、俺がとやかく言える立場ではない。
こんな想いを俺が感じるとは思ってもいなかった。
「泣きながら頷いてくれたよ」
頭が痛い。
心臓が痛い。
呼吸が一気に激しくなってしまいそうなくらいに苦しい。
立花が幸せになれるならそれでいい。
綺麗事だ。
自分でも分かっていた事なのに。