【完】君に贈る歌
「でもなぁ。どうせなら笑顔で頷いてほしかったぜ」
「・・・わがままだろそれは」
少し皮肉交じりに言ってしまう俺。
だけど圭介は気にしていない様子でこう続けた。
「わがままだよなぁ笑。んなこたぁ俺が一番よく分かってるよ。・・・一応明日退院なんだ。病院来る気ねぇ?」
「・・・」
行きたい気持ちと、行きたくない気持ちが交差する。
会いたい、会いたくない。
圭介のものになった彼女を見たくない。
でもひと目だけでいい、触れられなくてもいい、会いたい。
「声はまだ全然戻ってきてねぇけど、もう体の方は大丈夫だし定期的にカウンセリングに行けば家に戻ってもいいんだと」
「・・・そっか」
「来いよ」
「行かない」
「・・・そう言うと思ったけどさ」
今ではもう立花を知り尽くしているのは俺じゃない。
圭介だ。
そう思った瞬間『行かない』という言葉が口から飛び出た。
「俺もっとわがままなんだよ。もう一回四人で笑い合いたいって」
「・・・笑えるよ。何度だって」
「それには翔太がいねぇと駄目なんだよ」
「いるよ。ここに」
「会ってやってくれよ。翔太」