予言と過去



美雪は片手と片足を木の枝に掛け、反対の手と足を私の部屋の窓の縁(へり)に掛けていた。



「何やってんの!? 此処2階だよっ!?」



驚いて叫ぶと、美雪は窓の縁に掛けていた手の人差し指を口に当て、しーっと言った後、窓を こんこんと叩いた。



慌てて窓を開けると、彼女は音を立てないように静かに部屋に入って来て、窓を そーっと閉めた。



「おっきな声 出さないで。お婆ちゃん起きちゃうでしょ?」



美雪の言葉に小さく頷く。彼女は微笑んだ。



「久し振り、愛光。」


「……久し振り、じゃないよ。何で来たの?」


「愛光が会ってくれないからでしょ。」



美雪は可愛らしい顔を少し歪める。



「それは美雪が“良い加減”なんて言うから。」


「愛光、私そうゆう意味で言ったんじゃないんだよ。その後に続けたかった事、愛光が聞いてくれなかったから、窓から来たんじゃん。」



その後に続けたかった事?



私の怪訝そうな表情を見て、美雪は小さく息を吐いた。



「聞いてくれる? 愛光。」


「……うん。」



答えると、美雪は ぱっと笑顔を浮かべた。

< 12 / 89 >

この作品をシェア

pagetop