予言と過去
「愛光、良い子で待ってるのよ。」
「お婆ちゃんを困らせるなよ?」
優しく頭を撫でてくれる お父さんと お母さんを上目遣いに見上げて、私は ぷうっと頬を膨らませた。
今日は お父さんと お母さんの結婚記念日で、仕事を早く終わらせた2人は、これから私を置いて外出するんだ。
お婆ちゃん曰く、たまには私が居ないとこで、いちゃいちゃしたいらしい。
「やだもん。愛光も行きたい。」
「我儘 言わないで、愛光。ね、お願い。」
困ったように眉を下げて お母さんは両手を胸の前で合わせる。そんな風に されたら断れなくて、私は渋々 頷いた。
「良い子ね。お菓子 買って来てあげるから。」
その言葉に、私は漸く笑顔に なった。
「うん! 早く帰って来てね! 行ってらっしゃい!」
そうして私は手を振り、居間のソファでテレビを見ているであろう お婆ちゃんの元へ走って行った。
それが、両親と交わす最後の会話だなんて、気付きもせずに。