予言と過去
巫女とは、村の中で大爺様の次に高位な位だ。
しかし、その高い地位と引き換えに、自らの自由を手放す。
巫女は純潔でなければ ならないと言う決まりから、誰かに嫁ぐ事が許されない。現在の巫女も70歳に なるのに、ずっと独り身なのだ。
仮に、まだ自分が若い内に、自分よりも高い魔力を持つ者が現れれば、その者に地位を譲り、嫁ぐ事は出来るが、過去の記録から見ても、それを行った巫女は片手で数えられる程しか居ない。
また、女神イラの為だけに祈りを捧げる者として、俗世との関係を一切 絶たねば ならない。
即ち、家族と縁を切り、大聖堂の中で、女神の為だけに祈り続けるのだ。
憧れる者と恐れる者が後を絶たない、そう言う立場だ。
「勿論、巫女は大人でなければ ならないから、其方が正式に巫女と なるのは、初潮を迎えてからだ。」
大爺様は そう言った後、私の顔を覗き込んだ。
「巫女に なるのは嫌か、リホ。」
「私……解りません。」
暫く逡巡して、小さな声で呟いた。
村の子供達から恐れられる、私の力。それが巫女として村の為に役立つのは、とても嬉しい。
けれど。
お父さん、お母さん、ウィン、ライネス。
大切な人達と、一生 会えなくなるのは……嫌だ。
すると、大爺様は小さく息を吐いた後、口を開いた。