予言と過去
テレビを見ていたら、居間に在る電話が鳴った。お婆ちゃんが立ち上がって受話器を手に取る。私は そのままテレビを見ていた。
10分程 経った頃、お婆ちゃんが戻って来た。
「誰からの電話だったの?」
興味本位で訊いただけだった。それには答えずに、お婆ちゃんは私の手を取った。
「愛光、これから出掛けるよ。」
「え? 何処に?」
お父さんと お母さんだけ楽しんで来るんじゃ不公平だから、お婆ちゃんが代わりに どっかに連れてってくれるのかな?
でも。
見上げた お婆ちゃんの顔は、蒼白だった。
「……お婆ちゃん?」
「話は後で するから。おいで。」
有無を言わせぬ口調。私は黙って立ち上がった。
「……良い子ね。」
お婆ちゃんは微笑んだ。
哀しいのに無理を して笑っているような、そんな笑顔。
何が起きているのか全く解らなくて、私は溢れそうに なる涙を ぐっと堪えた。